各研究室紹介

産婦人科 分子細胞生物学研究室

リーダー
長阪一憲 教授
メンバー
渡邉さや(大学院)、髙﨑和樹(大学院)、髙橋ゆう子(大学院)、橋本啓(大学院)、福井志保(Ph.D.)、川田淑子(Ph.D.)、小池良子、杉原武(米国ハーバード大学ダナファーバーがん研究所)、一瀬隆行、西田晴香、平野茉来、宮川優子、平池春子

私たちの研究室では、産婦人科の基礎研究を行っています。婦人科悪性腫瘍(主に進行・再発卵巣がん、子宮頸がん)に対しては、発癌メカニズムの解明と創薬への応用、新たな診断技術の開発を目指しています。また研究は良性疾患も対象に行っており、子宮筋腫の発生メカニズム、子宮内膜症の新規診断開発、また周産期の分野である胎盤発生のメカニズムにも基礎研究の幅を広げてております。DNA、RNA、タンパク質を用いたウエットな実験、3次元培養法を用いた実験から、マウスを用いた動物実験、さらには疫学的な研究まで、多岐に渡る研究活動を行っております。他大学、企業との共同研究も活発であり、東京大学などと医工連携研究を行っています。希望者には、医学博士取得後の国内留学、海外留学への道が開かれており、また科研費取得、各民間助成金取得に向けた個別指導も行っています。下記に我々の研究の一部をご紹介いたします。

研究紹介 ①:腹水浮遊細胞集団から癌幹細胞様細胞を分離

大量腹水を伴う癌性腹膜炎を持つ患者から腹水を採取し、腹水中の上皮細胞を分離、癌幹細胞マーカー(CD44、CD133、ALDH1A1、EpCAM)の発現プロファイリングと、臨床病理的背景および予後との関連について解析を進めています。腫瘍微小環境を構成する腫瘍関連線維芽細胞、血管内皮細胞などの分離も行っており、癌幹細胞様細胞との共培養実験で関連する予後因子の同定を試みています。

論文発表
  • Miyagawa Y, Nagasaka K, Yamawaki K, Mori Y, Ishiguro T, Hashimoto K, Koike R, Fukui S, Sugihara T, Ichinose T, Hiraike H, Kido K, Okamoto K, Enomoto T, Ayabe T. Evaluating the Angiogenetic Properties of Ovarian Cancer Stem-like Cells using the Three-dimensional Co-culture System, NICO-1. J Vis Exp. 2020 Dec 5;(166). doi: 10.3791/61751. PMID: 33346189.
  • 長阪一憲 第72回日本産科婦人科学術講演会

JSOG congress Encouragement Award その他、学会発表多数。

毎週開催されるリサーチカンファレンスを通して、指導教官の丁寧で的確なアドバイスの元、着実に研究を進めることができます。

研究紹介 ②

脱ユビキチン化酵素 UCHL5の発現と予後との関連について検討を行い、 UCHL5阻害による抗腫瘍効果を検討しました(福井志保先生)。

TP53に変異のあるMESOV,SKOV3細胞株をヌードマウスに皮下移植し、UCHL5阻害剤であるbAP15を腹腔内投与し、抗腫瘍効果を検討しました(下図)。bAP15を投与しなかった群に比べ、皮下腫瘍径の増加の抑制が認められました。TP53に変異を有する卵巣癌におけるbAP15の抗腫瘍効果を明らかにしました。TP53に変異を有する進行性卵巣癌および他臓器癌に対し、選択的UCHL5阻害薬が新規治療標的候補になり得ることが示唆されています。

論文発表
  • Fukui S, Nagasaka K, Miyagawa Y, Kikuchi-Koike R, Kawata Y, Kanda R, Ichinose T,Sugihara T, Hiraike H, Wada-Hiraike O, Sasajima Y, Ayabe T The proteasome deubiquitinase inhibitor bAP15 downregulates TGF-β/Smad signaling and induces apoptosis via UCHL5 inhibition in ovarian cancer.Oncotarget. 2019

Oct15;10(57):5932-5948.その他、学会発表多数

研究紹介 ③

東京大学生産技術研究所との共同研究として、マイクロ流体デバイスを用いて複雑なヘテロな細胞集団から特定の細胞を選抜するシステム開発に取り組んでいます。子宮頸がん検診に本技術が応用できると自動化した細胞診断が可能となるかもしれません。


シングルセル用のデバイス
(応用マイクロ流体システムを利用)

細胞が1個ずつウェルにトラップされている

(第73回 日本産科婦人科学会学術講演会 橋本啓先生)

ページの先頭へ